弟が結婚することになったと聞いたとき、私は素直に喜んでいた。久しぶりに開かれたお食事会は、和やかな雰囲気で始まり、誰もが祝福ムードに包まれていた。
しかし、その空気が一変したのは、相手女性が現れた瞬間だった。
「……あれ?」
私は思わず声を漏らした。目の前にいた女性は、どこかで見覚えがある。いや、見覚えどころではない。学生時代の友人・Aだった。
「Aさん……? え、ちょっと待って。弟の結婚相手って、Aの妹さんじゃなかったの?」
私の言葉に、その場の空気が一瞬止まった。
しかし周囲は不思議そうに首をかしげる。
「何を言ってるの? 結婚相手はAさん本人よ?」
その一言で、私の思考は完全に停止した。
「え……Aさんが、お相手……?」
信じられなかった。弟の結婚相手は、当然Aの妹だと思い込んでいたからだ。だが現実は、私の認識とはまったく逆だった。
Aは少し困ったように微笑みながら、弟の隣に座っている。その距離感、その雰囲気は、確かに“恋人”そのものだった。
私はようやく理解した。自分だけが、完全に勘違いしていたのだと。
場の空気は再び穏やかさを取り戻していく。しかし私の中だけが、取り残されたようにざわついていた。
弟は何事もなかったように笑っている。その横でAも静かに微笑む。
そして私は、ただ一言だけ呟いた。
「……そういうことだったの」
その瞬間、すべての誤解がゆっくりと解けていった。