正直、
あの時点で普通に終わると思ってた。
満員電車で、
ヨーグルト飲んで。
次におにぎり食べて。
最後にコーヒー。
その時点で
「いや電車で食うなよ」
とは思ってた。
でも、
まあ変な人いるしな、
くらいだった。
問題は次。
電車が揺れた瞬間、
そのコーヒーが全部こっちに飛んできた。
コート、
シャツ、
バッグ。
全部にかかった。
しかも相手。
「あっ。」
それだけ。
謝罪なし。
そのまま降りようとした。
その瞬間、
頭の中で何か切れた。
「あ、これ無理だわ」
って。
気づいたら、
ホームで腕掴んでた。
「ちょっと待ってください。」
相手、
一瞬だけ振り返る。
でもすぐ、
腕を振り払おうとした。
「急いでるんで。」
……は?
いやいや。
今コーヒー全部かけたよね?
私はできるだけ冷静に言った。
「今、
かかりましたよね?」
すると相手、
顔をしかめながら言った。
「いや、
当たってないと思いますけど。」
その瞬間、
逆に笑いそうになった。
いや、
服見ろよ。
私はコートを指差した。
しっかりシミになってる。
でも相手、
まだ逃げる。
「混んでたし、
別の人じゃないですか?」
完全に
“逃げ切れるか試してる”
顔だった。
私は一歩前へ出て、
進路を塞いだ。
「いや、
あなたでしたよね?」
相手、
少しだけ顔変わる。
でもまだ強気。
「証拠あります?」
——出た。
その一言で、
完全にスイッチ入った。
ENFPの悪いところ出たと思う。
「あ、
そういう感じね。」
私はスマホを取り出した。
「じゃあ駅員呼びます。」
その瞬間、
相手の動き止まった。
でもまだ言う。
「大げさじゃないですか?」
私はそのまま続けた。
「防犯カメラも確認してもらいます。」
一歩も引かなかった。
周囲も、
なんとなく空気を察し始める。
「何?」
「揉めてる?」
逃げ場なくなったの、
相手も分かったんだと思う。
顔が少し崩れた。
「……すみません。」
小さい声だった。
でも、
まだ終わらせなかった。
「すみませんじゃなくて、
どうするつもりですか?」
相手、
完全に詰まる。
数秒沈黙。
それからやっと言った。
「クリーニング代…
払います。」
私は首を振った。
「これから商談なんで。」
「今、
着替えないと無理なんですけど。」
そこまで言った瞬間、
相手の顔色が変わった。
「あの…
じゃあ新しいの買います。」
やっとそこまで来た。
私はため息ついた。
「じゃあ今から行きましょう。」
そのまま駅ビルへ。
相手、
道中ずっと無言。
さっきまでの強気、
全部消えてた。
服屋に入って、
私は同じようなシャツを選んだ。
値段見た瞬間、
相手の顔ちょっと引いてた。
でも何も言わない。
レジで支払い。
袋を渡しながら、
今度はちゃんと頭を下げた。
「本当にすみませんでした。」
私は少しだけ間を置いて言った。
「最初にそれ言えば、
ここまでならなかったんですよ。」
それだけ言って帰った。
正直、
疲れた。
でも思った。
こういう人って、
最初から謝る気ゼロじゃない。
ただ——
“逃げられるなら逃げたい”
だけなんだって。
だから今回は、
ちゃんと止めただけ。
それだけだった。