店を開ける準備をしていた朝だった。
駐車場を見た瞬間、
私は思わず舌打ちした。
「……またかよ」
うちの契約スペースに、
見知らぬ車が停まっていた。
無断駐車。
しかも、
初めてじゃない。
一回や二回じゃない。
何度もだ。
そのたびに、
張り紙をした。
警告もした。
コーンも置いた。
でも、
結局また停められる。
正直、
もう我慢の限界だった。
無断駐車って、
やられる側からすると本当にストレスなんです。
ただスペースを取られるだけじゃない。
お客さんが停められない。
営業時間前に対応しなきゃいけない。
無駄な時間を取られる。
小さい店をやってる側からすると、
毎日の時間って本当に貴重なんです。
なのに、
こっちの事情なんか関係なしに、
平然と停めていく人がいる。
しかも、
そういう人に限って、
「ちょっとくらい」
くらいにしか思ってない。
その瞬間、
私は決めた。
——今回は逃がさない。
まず警察へ連絡した。
でも、
現実は厳しかった。
車の所有者情報は、
すぐには確認できない。
しかも、
警察も基本的には
「民事なので」
というスタンス。
つまり、
すぐ解決してくれるわけじゃない。
その時、
私の中で一つの考えが浮かんだ。
「だったら、こっちから動くしかない」
私は店の奥から、
以前購入していたタイヤロックを持ってきた。
そして、
無断駐車の車へ取り付けた。
さらに、
フロントガラスへ紙を貼った。
『無断駐車につきタイヤロック中。
解錠希望の方は2万円をお支払いください』
もちろん、
多少のリスクがあるのも分かっていた。
でも、
何もしなければ、
こういう人はまた繰り返す。
「他人の場所を勝手に使っても、
結局何も起きない」
そう思ってるから。
数時間後。
案の定、
電話がかかってきた。
相手は開口一番、
ブチギレだった。
「おい!なんだこれ!?」
「タイヤ傷ついたらどうすんだよ!」
私は驚くくらい冷静だった。
むしろ、
やっと来たかと思った。
私は淡々と答えた。
「無断駐車ですよね?」
相手は言葉を詰まらせたあと、
さらに怒鳴った。
「だからってロックするとかおかしいだろ!」
「傷ついたら責任取れんのか!?」
私は静かに返した。
「傷がついたと思うなら、
どうぞ訴えてください」
そして続けた。
「裁判で判決が出るまで、
ロックは外しません」
数秒、
電話の向こうが黙った。
たぶん、
予想外だったんだと思う。
こっちがビビると思っていたんだろう。
でも私は、
もう完全に腹が決まっていた。
すると数分後、
相手の態度が変わった。
「……いくら払えばいいんだよ」
私は即答した。
「2万円です」
相手は舌打ちした。
でも最終的に、
本当に2万円を持ってきた。
私は現金を確認して、
タイヤロックを外した。
その瞬間、
今まで溜まっていた苛立ちが、
一気に消えていく感じがした。
“やっと、
こっちが泣き寝入りしなかった”
そんな感覚だった。
しかも、
この件があってから。
無断駐車、
ほぼ消えた。
たぶん噂が回ったんだと思う。
「あそこ勝手に停めるとヤバい」
って。
正直、
2万円という金額が高すぎるとは思っていない。
だって、
無断駐車って、
やられる側には本当に迷惑だから。
時間も奪われる。
仕事も止まる。
ストレスも溜まる。
しかも、
無断で使う側って、
基本的に罪悪感が薄い。
「ちょっとだけ」
「空いてたから」
「別にいいじゃん」
そういう軽い感覚で、
他人の場所を使う。
でも、
その“ちょっと”を、
毎回片付けさせられる側はたまらない。
だから私は、
あの日の対応を後悔していない。
むしろ、
もっと早くやればよかったと思っている。
自分の場所を守ること。
泣き寝入りしないこと。
それって、
想像以上に大事なんですよね。
そして何より、
最後にはちゃんと
“やった側が代償を払った”。
それが、
一番スッとした。
無断駐車って、
「停めたもん勝ち」
みたいになることが多い。
でも、
少なくともあの日だけは違った。
勝手に停めたなら、
ちゃんと責任を取る。
当たり前のことを、
当たり前にさせただけ。
私は今でも、
あの時の判断は間違ってなかったと思っている。