帰省のため、新幹線の指定席に乗ろうとした瞬間、目の前に若い夫婦が座ろうとしていた。最初は単なる間違いかと思ったが、男性が「実は嫁が妊娠中で…」とお腹をなでながら微笑む妻を指差して言ったとき、私はすぐに理解した。「席を譲れ」ということだ。
心の中でイラッとしつつも、穏やかに提案する。「私たちもあと四時間近く乗ります。車掌さんに早めに確認してみては?」すると妻の笑顔は瞬時に冷たい表情に変わり、少し怖さを覚えた。だが、結局二人は引き下がった。
その後、男性が再び近づき「一席譲っていただけませんか?」と言い出した。普段なら妊婦には譲るところだが、この図々しい要求には耐えられなかった。旦那が冷たく「絶対に無理です」と言うと、私もきっぱり「私も譲りません。他を当たってください」と返した。
二人は渋々引き下がり、私たちはようやく落ち着いて座ることができた。お金を払って事前に取った指定席は、やはり譲る義務などない。
自分たちの努力を無視して押し付ける者には、毅然とした態度こそが必要だと再確認した瞬間だった。