
その瞬間、空気が止まった。
義姉が煮物を一口食べて、顔をしかめたあと、
「まっずw 何これ」
そう言って笑った。
それだけでも十分きつかった。
でも本当にありえなかったのは、その次。
皿を持ち上げて、そのままゴミ箱に捨てた。
一瞬、何が起きてるのか分からなかった。
朝から何時間もかけて作った料理だった。
義父の体調考えて、味も何度も調整して、
義母と相談しながら決めた献立。
それを、目の前で、ためらいもなく捨てる。
しかも笑いながら。
「こんなの食べられないって」
その一言で済ませる感じ。
正直、その時点で限界だった。
でも、すぐには言い返せなかった。
ここで感情的になったら終わるって分かってたから。
その間にも、義姉は止まらない。
「天ぷらもべちゃべちゃ」
「ご飯もセンス古い」
全部軽く否定する。
義兄は横で苦笑い。
誰も止めない。
その空気が一番きつかった。
でも、その時だった。
ずっと黙ってた義父が、箸を置いた。
ゆっくり、音を立てて。
そして、一言だけ言った。
「帰れ」
静かな声だった。
でも、はっきり聞こえた。
全員が止まった。
義姉も一瞬理解できてなかった。
「え?」
義父はそのまま続けた。
「今すぐ帰れ」
空気が完全に変わった。
さっきまでの軽さが全部消えた。
義姉の顔が引きつる。
それでもまだ言い返そうとした。
「ちょっと言いすぎじゃない?」
でも、義父は一切引かなかった。
「食べ物を捨てるな」
その一言が重かった。
さらに続けた。
「その料理はな、この子が朝から作ったものだ」
「お前の母さんの味を聞きながら、ちゃんと考えて作ってる」
その言葉で、全部止まった。
義姉は何も言えなくなった。
さっきまでの余裕が消えてる。
義兄も黙る。
義母は泣きそうな顔。
夫も何も言わない。
義父だけが、まっすぐ義姉を見てた。
「そんなことも分からないなら、もう来なくていい」
完全に終わりだった。
結局、その日のうちに義姉たちは帰った。
玄関でもまだ不満そうだったけど、
誰ももう相手にしなかった。
その後、義父が一言だけ言った。
「すまなかったな」
その言葉で、全部が崩れそうになった。
悔しかったのも、悲しかったのも、
全部一気に出てきた。
でも同時に、はっきり分かった。
ちゃんと見てくれてる人はいる。
あの料理は無駄じゃなかった。
捨てた人じゃなくて、
ちゃんと受け取った人のほうが、本物だった。