高橋佑斗(30歳)は絶望の淵にいた。13社連続で不採用。口下手な彼は、面接のたびに沈黙に負け、自分自身の価値を見失いかけていた。
その日も14回目の面接へ向かう途中、激しい雨が降り出した。バス停の屋根の下、スマホに没頭する大人たちをよそに、一人の少女が車イスのまま立ち往生していた。段差に車輪を取られ、濡れた毛布に身を震わせる少女。佑斗は迷わず駆け寄り、自分の身を濡らしながら彼女に傘を差し出した。
「冷えますから」
無言で車イスを持ち上げ、バスへの乗車を介助した佑斗に、少女・ユナは微笑んだ。「きっと、うまくいきますよ」。その言葉を胸に、彼は面接室へ向かった。
面接の最後、面接官が問うた。「日常で困っている人を見かけたらどうするか」。華麗な回答を並べる他者に続き、佑斗は絞り出すように答えた。「言葉は得意ではありません。だから、理屈よりも先に動きます」。
数日後、彼に届いたのは初めての内定通知だった。
後日、入社手続きで訪れたオフィスで、面接官が静かに告げた。
「あの日、娘を助けてくれてありがとう」。視線の先には、役員の父を待つユナの姿があった。
雄弁な言葉よりも、一瞬の誠実な行動が運命を変えた。雨上がりの空の下、佑斗は14社目にしてようやく、自分を信じて歩き出すことができたのだ。