披露宴の会場は華やかな笑顔と祝福の声で包まれていた。私は乾杯の準備をしていたその瞬間、突然新婦が立ち上がり、顔色を失って嘔吐してしまった。周囲は一瞬、凍りついたような静寂に包まれる。私は咄嗟に「緊張しすぎたのかな…」と心の中で呟いた。
すぐに隣にいた友人の医者が駆け寄り、落ち着いた声で「別室に行きましょう」と促す。周囲の人々が新婦を囲み、そっと付き添う中、新婦の顔には焦りと不安が浮かんでいた。私は手に持ったグラスを握りしめながら、どうしてこんなことに…と動揺した。
しかし次の瞬間、友人医者が低く厳しい口調で一言告げた。「血圧が急激に下がっています。今すぐ処置が必要です。」その言葉に新婦は青ざめ、緊張の糸が切れたかのように小さく震える。会場のスタッフも状況を理解し、すぐに医療用ベッドと応急セットを用意する。
私は新婦の手をそっと握り、安心させようとした。医者の指示に従い、スタッフが迅速に処置を進める。
幸いにも、軽い脱水と緊張による一過性の血圧低下であり、命に別状はなかった。しかし、誰もが息を呑んだ瞬間は忘れられない。
新婦が落ち着きを取り戻し、微笑みを浮かべて席に戻ったとき、会場からは安堵の溜息と小さな拍手が起きた。私は胸を撫で下ろしながら思った。祝福の場でも、何が起きるかわからない。だが、冷静で迅速な対応があれば、最悪の事態も防げるのだと。