息子が初めて、自分から「トイレに行く」と言って排便できた日。
私にとって、その日は一生忘れられない特別な日になりました。
息子は生まれた時、お尻の穴がありませんでした。
生後2日で13時間以上にも及ぶ大手術を受け、お腹に人工肛門をつけることになりました。
担当医からは、
「鎖肛の程度が重ければ、一生人工肛門になる可能性もあります」
と説明されました。
私は毎日、お腹についたストーマの袋を確認し、便がたまればきれいに処理をし、2日に一度は装具を交換しました。
皮膚がかぶれれば薬を塗り、少しでも痛くないように必死でケアを続けました。
そんな生活が当たり前になっていました。
けれど、その後の検査で思いがけない知らせがありました。
大腸の位置が想像より良く、お尻の穴を作る手術ができるかもしれないというのです。
そして手術は成功しました。
ただ、医師からは、
「穴は作れても、排便に必要な筋肉までは作れません。自分で排便できるようになるかは分かりません」
と言われました。
そこからは毎日の訓練でした。
息子は痛みや不安に耐えながら、本当に一生懸命頑張りました。
そしてついに、自分の足でトイレへ行き、自分の力で排便することができたのです。
私は涙が出るほど嬉しかった。
息子も誇らしそうに笑っていました。
その喜びを誰よりも早く伝えたかったのでしょう。
遊びに来ていた祖父のところへ走って行き、
「じいじ!ぼく、一人でうんちできたよ!」
と嬉しそうに報告しました。
ところが父は新聞から顔も上げず、
「そんなこと、どうでもいい。くだらん。」
そう言って息子を押しのけたのです。
私は耳を疑いました。
人工肛門だった頃、父はストーマ交換を見て、
「これは俺にはできない。本当に母親はすごいな。」
と私を労ってくれた人です。
息子のことも、とてもかわいがってくれていました。
だからこそ、その一言が信じられませんでした。
息子は笑顔をなくし、何も言わず私の後ろへ隠れました。
私はすぐに息子を抱きしめ、
「すごいよ。本当によく頑張ったね。お母さんは世界一うれしいよ。」
と何度も伝えました。
誰かにとっては「ただトイレで排便できた」だけの出来事かもしれません。
でも私たち親子にとっては、何度も手術を乗り越え、痛みに耐え、ようやくたどり着いた奇跡の一歩でした。
だから私は、この日の息子の笑顔と頑張りだけは、誰に否定されても一生忘れません。