私が今まで出席した結婚式の中で、一番忘れられない式があります。
新郎新婦はいわゆる「授かり婚」でした。
交際を始めてすぐ妊娠が分かり、そのまま入籍。結婚式は入籍から約一年後に行われました。
招待された友人同士で、「赤ちゃんも来てるのかな?」と話していたのですが、出産報告を受けた人は誰もおらず、式が始まっても赤ちゃんの姿はありません。
その時点で、私は「もしかして何かあったのかな……」と感じていました。
そして披露宴が始まり、新婦の上司によるスピーチの時間になりました。
その上司は涙ぐみながら、
「授かり婚でしたが、その後、とても残念な出来事がありました」
と話し始めたのです。
会場全体が一気に静まり返りました。
赤ちゃんを亡くしていたことを、その場で初めて知った参列者も多かったと思います。
私は内容よりも、「この話って、新郎新婦が話していいと許可したのかな……」ということが気になってしまいました。
ところが、その心配は次の演出ですぐに吹き飛びました。
プロフィールムービーが流れ始めたのです。
幼い頃から学生時代までの思い出の写真がテンポよく映し出され、会場も和やかな雰囲気になっていました。
その直後でした。
ほんの一瞬、ビニール袋に包まれた赤黒い赤ちゃんの写真がスクリーンいっぱいに映し出されたのです。
画面には、
「あなたのことは忘れません」
というテロップまで添えられていました。
映った時間は一秒もなかったと思います。
それでも何の写真なのか理解するには十分でした。
医療の知識はありませんが、流産ではなく死産だったのではないか、と感じました。
会場は完全に言葉を失っていました。
誰も拍手もできず、ただ静かに映像が終わるのを見つめていました。
さらに披露宴の最後、新郎の謝辞で、
「実は、妻のお腹には新しい命が宿っています」
と発表がありました。
でも、新婦のお腹はまったく目立たず、言われなければ妊娠しているとは誰も気付かなかったと思います。
もちろん、新しい命を授かったことはおめでたいことです。
亡くなった赤ちゃんを忘れたくないという気持ちも理解できます。
ただ、何が起こるか分からない時期にあえて妊娠を発表することや、多くの参列者に亡くなった赤ちゃんの写真を見せる演出が本当に必要だったのかは、最後まで疑問でした。
お祝いの席のはずなのに、式が終わっても誰も明るい気持ちになれず、なんとも言えない後味だけが残った結婚式でした。