父の葬儀の最中、私は信じられない光景を目にした。
控室で弟嫁がスマホをいじりながら、まるで自慢話でもするかのように言ったのだ。
「もう300万使っちゃったw」
一瞬、耳を疑った。
どうやら父の通帳と印鑑を勝手に持ち出し、葬儀の混乱に紛れてお金を引き出したらしい。しかも悪びれる様子もない。
普通なら怒りで震えていたかもしれない。
でも、その瞬間、私は思わず大笑いしてしまった。
弟嫁は怪訝そうな顔で言う。
「何がおかしいの?」
私は落ち着いた声で、ゆっくり尋ねた。
「ねえ、その通帳……名義、ちゃんと確認した?」
弟嫁の顔が一瞬で固まった。
「え?」
そう、彼女が父の通帳だと思い込んでいたそれは、実は私が管理していた別口座だった。葬儀前に手続きのため一時的にまとめていただけのものだ。もちろん引き出し履歴もすべて残るし、銀行の記録もはっきりしている。
数秒の沈黙のあと、弟嫁の顔色はみるみる青くなった。
さっきまでの余裕の笑みは消え、言葉も出ない。
私は静かに言った。
「まあ、大丈夫。銀行にも全部記録残ってるから。」
父を送る場で起きた信じられない出来事。
でもその瞬間、私は確信した。
人のものを盗んで平然としていられる時間は、そう長くは続かないのだと。