娘がお菓子を握ったまま店の出口へ向かった瞬間、背後から鋭い声が飛んできた。
「会計してませんよね?」
振り返ると、店員さんが厳しい顔でこちらを見ていた。
私は慌てて娘の手元を確認し、すぐに説明した。
「あ、これはさっき別の店で買ったものです。娘が気に入って、ずっと持っていて……」
しかし店員さんは、私の言葉を最後まで聞かなかった。
「嘘はいいので、こちらへ来てください」
その一言で、周囲の視線が一斉に私たちへ集まった。
娘は何が起きたのか分からず、私の服の裾をぎゅっと握った。
私はバッグの中を探したが、レシートがすぐに見つからない。
焦れば焦るほど指先が震え、店員さんの表情はますます疑いに固まっていった。
その時、隣にあったダイソーの店員さんが小走りで近づいてきた。
「すみません。そのお菓子、うちで販売している商品です」
彼女は娘の手元を見ただけでそう言い、袋の裏にあるバーコードを確認した。
そして自分の端末で素早く商品番号を照合し、さらにレジの購入履歴まで確認してくれた。
「先ほど、このお客様が購入されています。時間も一致しています」
その場の空気が、一瞬で変わった。
疑っていた店員さんの顔から血の気が引いた。
私はようやくバッグの底からレシートを見つけ、静かに差し出した。
「子どもの前で、嘘つき扱いされたことは忘れません」
店員さんは深々と頭を下げたが、娘はまだ不安そうに私の手を離さなかった。
その帰り道、娘は小さな声で言った。
「ママ、悪いことしてないよね?」
私は娘の手を握り返し、はっきり答えた。
「していないよ。だから、ちゃんと胸を張って帰ろう」
ダイソーの店員さんの冷静な確認がなければ、私たちは最後まで疑われたままだったかもしれない。
たった一つのお菓子が、親子にとって忘れられない出来事になった。