
娘が五歳になってから、私は母として生きるだけで精一杯だった。ある夜、これまでにない激しい腹痛に襲われ、立つこともできず、ソファで娘の手を握ることしかできなかった。娘は不安そうに「大丈夫?」と尋ね、すぐに夫へ電話をかけた。
「パパ、ママを助けて!」と必死に訴える娘に対し、夫は酒に酔った軽い口調で「飲んでるから適当にして、寝れば治る」と言い、電話を切った。娘はショックを受けながらも、私を助けようと必死に動き、水を持ってきたり、誰かに助けを求めようとした。
その後、私は意識を失った。翌朝、病室で目覚めると夫から電話があり、「もう治ったか?」と他人事のように聞かれた。私は静かに「娘は亡くなりました」と伝えた。
あの夜、娘は私を助けるため一人で外へ助けを求めに出たが、それが命を奪う結果となった。夫は信じられない様子だったが、私は「あなたの“適当にして”という一言が致命的だった」と告げた。娘は父に助けを求め、拒まれ、それでも諦めずに私を守ろうとしたのだ。
夫は後悔し泣き崩れたが、私は慰めなかった。「遅い」とだけ言い、葬儀の案内を伝えて電話を切った。ベッド脇には娘の描いた家族の絵があり、その距離が現実を示していた。
娘はもういない。しかし、彼女が最後まで信じた「助けて」という言葉を、私は二度と踏みにじらせないと心に誓った。