『今朝預けた子どもを返して』見知らぬ夫婦の一言で大騒動に。放置された子どもの行方は誰にも分からなかった――。
2026/06/23

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夕方六時頃、インターホンが鳴りました。

モニターを見ると、見覚えのない夫婦が立っています。

夫が応対すると、開口一番こう言われました。

「今朝預けた子どもを迎えに来ました。」

私も思わず玄関へ出ました。

「申し訳ありませんが、人違いではありませんか?」

すると女性は私の顔を見るなり、

「あんた誰?」

と逆に驚いたのです。

話を聞いてみると、ようやく原因が分かりました。

私たちのアパートは、一階と二階の玄関が並んでいる少し変わった造りです。

夫婦は二階の私たちの玄関を、一階に住む友人宅だと勘違いしていたのでした。

しかも驚いたのは、その後です。

「朝七時に子どもを置いてきました。」

「インターホンを押して、『よろしくね』って声をかけたので。」

私は耳を疑いました。

「えっ……返事は確認したんですか?」

「電話もしましたよ。留守電だったからメッセージも残しました。」

しかし、その友人に電話をかけ直すと、まったく知らない人が出ました。

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電話番号はすでに変わっていたのです。

さらに不動産会社を通じて確認すると、その友人は前日から県外へ出張中。

つまり、その家には誰もいませんでした。

その瞬間、全員の顔色が変わりました。

「じゃあ……子どもは?」

家の前には用水路があります。

周囲は建築中の住宅ばかりで、大きな重機も動いていました。

もし一日中一人で歩き回っていたとしたら——。

誰も最悪の想像を口にはしませんでしたが、頭の中では同じことを考えていました。

すぐに警察へ通報。

近所にも声をかけ、みんなで子どもを探し始めました。

その一方で、放置した夫婦は夫婦喧嘩を始めます。

「お前がちゃんと頼んだって言っただろ!」

「だって二日前に会った時、『連休は予定ない』って言ってたじゃない!」

夫が呆れて聞きました。

「預かってほしいって、ちゃんと許可はもらったんですよね?」

すると奥さんは目を泳がせ、小さな声で、

「……ちゃんとは聞いてない。」

その場の空気が凍りました。

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予定がないことと、子どもを預かることはまったく別です。

そんな当たり前のことさえ考えず、朝七時に幼い子どもを置いて夫婦で遊びに出かけていたのです。

それからしばらくして——。

遠くから泣き声が聞こえました。

見ると、小さな男の子が一人で歩いてきます。

警察官が駆け寄ると、男の子は泣きながら、

「おうちが分からなくなった……。」

と話しました。

事情を聞くと、近くの建築途中の家へ入り込み、そのまま迷ってしまったそうです。

もし足を踏み外していたら。

もし重機が動いていたら。

もし用水路へ落ちていたら。

そう考えただけで背筋が寒くなりました。

警察は放置夫婦を厳しく指導し、周囲の住民も怒りを隠せませんでした。

騒ぎが落ち着いた頃、私はようやく思い出しました。

実はその日の朝、私たちが留守だった理由。

私は新型インフルエンザで四十度近い熱を出し、夫に付き添われて病院へ行っていたのです。

帰宅後も熱でふらふらだった私は、マスクを付ける余裕もなく、玄関先であの夫婦と長い時間話していました。

数日後。

近所の人から聞きました。

「あのご夫婦、そろって高熱で寝込んだらしいよ。」

私は何も言いませんでした。

一番守るべきだった子どもを、確認もせず玄関先へ置き去りにした結果。

その日の代償は、夫婦が思っていたよりずっと大きかったのです。

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