昭和五十一年、石川県金沢市で、二十五歳の販売員・佐々木美智子が忽然と姿を消した。
彼女は百貨店で働く真面目な女性だった。東京から単身で金沢へ移り、古い木造アパートで慎ましく暮らしていた。だが、その平穏は三月中旬から崩れ始める。帰宅途中に感じる視線、毎日同じ場所に立つ男、そして玄関に差し込まれる不気味な紙片。
「今日も綺麗でしたね」
「私が守ってあげます」
恐怖に耐えきれなくなった美智子は警察へ助けを求めた。そこで対応したのが、警部補・田中誠だった。田中は穏やかな口調で話を聞き、容疑者を警告し、アパート周辺を巡回した。美智子も両親も、この親切な警察官こそが彼女を守ってくれると信じていた。
しかし七月十五日、美智子は仕事帰りに失踪する。財布も定期券も部屋に残されたまま、彼女だけが消えた。田中は両親に「必ず見つけます」と頭を下げ、七年間も慰め続けた。
だが昭和五十八年、同僚刑事の震える証言で真実は崩れ落ちる。美智子を奪った張本人は、守ってくれたはずの田中だった。
親切な顔で被害者家族に寄り添い続けた男。その仮面の下に隠されていた正体は、あまりにも冷酷だった。