嫁が破水したその日、私は仕事で立ち会えなかった夫の無神経さに唖然とした。なのに夫は「ゴルフ旅行に行く」と出かけていった。出発前の私の声も、携帯の着信も、すべて無視。心の中で、どうしてこんな人と人生を共にしているんだろうと、怒りと不安が渦巻いた。

あの日から3日間、病院と自宅でひとり陣痛に耐え、子どもの誕生を迎えた私。夫からの連絡はゼロ。痛みと疲労の中で、母として必死に新しい命と向き合った。
そして、3日後、夫が帰宅した。その瞬間、目に飛び込んできた光景に息を呑んだ。リビングには赤ちゃんを抱いた私が座っており、床には夫のゴルフバッグが無造作に置かれていた。隣には、笑顔でこちらを見上げる新生児の顔。無事に生まれた喜びと誇りが、夫の顔に突き刺さったに違いない。
「え…まさか…」夫は言葉を失った。旅行先での自慢話も、プレーの自慢も、一切通じない。そこにあったのは、新しい家族と母としての私の力強さだけ。夫は初めて、自分の無神経さと向き合わされることになったのだ。
その日、私は心の中で静かに笑った。夫の不在と無神経さを乗り越えた自分の強さと、無事に生まれた我が子への誇りが、何よりも勝った瞬間だった。