彼女とは共通の趣味で知り合った友人だった。
暇さえあれば、
「ご飯行こうよ!」
「新しいお店見つけた!」
と誘ってくる。
最初は楽しかった。
ところが会計になると、毎回同じだった。
財布を出す素振りだけして、
「あっ、今月ピンチだった」
「次は払うから!」
と言うのだ。
そして結局、私が払う。
一度や二度なら気にならない。
でもそれが何か月も続いた。
ある日なんて、
「あなた家お金持ちだし、このくらい平気でしょ?」
と笑いながら言われた。
正直、その時点でかなりモヤモヤしていた。
そんなある日、共通の友人たちを含めて食事会を開くことになった。
彼女はいつものように上機嫌だった。
席に着くなり、
「好きなの頼みなよ!」
と言う。
もちろん自分は一番安いメニュー。
どうせ最後は私が払うと思っているのだろう。
しかしその日、一緒にいた友人が妙に積極的だった。
高めの料理。
デザート。
ドリンク。
次々と注文していく。
彼女の表情が少しずつ曇り始めた。
そして会計の時間になった。
店員が金額を読み上げる。
その瞬間、友人が笑顔で言った。
「じゃあ今日は全員きっちり割り勘ね。」
彼女の顔が固まった。
「えっ?」
「いつもみたいに……」
言いかけて止まる。
すると友人は静かに言った。
「いつもって何?」
「毎回同じ人に払わせるのが普通なの?」
彼女は慌てて言い訳を始めた。
「だって家がお金持ちだし……」
すると友人は即座に返した。
「家がお金持ちなのは本人の義務じゃないよ。」
「友達って助け合うものでしょ?」
「一人だけが得する関係じゃないよね。」
周囲は静まり返った。
誰も彼女をかばわなかった。
彼女は顔を真っ赤にしながら、自分の分の代金を支払った。
帰り道、私は友人にお礼を言った。
すると友人は笑って言った。
「善意を見せるのは優しさだけど、それを当然だと思われたら終わりだよ。」
その言葉は今でも忘れられない。
その後、彼女から食事の誘いはほとんど来なくなった。
たぶん、友達が欲しかったんじゃない。
ずっと都合のいい財布が欲しかっただけなのだろう。
でもその日、彼女は失った。
数千円よりもずっと価値のある、本当の友人を。