友人はお金を借りる時、
「次の給料が入ったら絶対返す」
と何度も頭を下げていました。
私は特に借用書も作りませんでした。
信頼していたからです。
ところが給料日が過ぎても連絡はありません。
一か月。
二か月。
三か月。
返済の話は一切出ませんでした。
その一方で、彼女のSNSには楽しそうな投稿が増えていました。
新しいブランドバッグ。
人気コスメの購入報告。
推しのライブ遠征。
「お金がないんじゃなかったの?」
そう思いましたが、友達関係を壊したくなくて何も言えませんでした。
しかしある日、私のスマホが故障しました。
買い替え費用が必要になり、私自身も余裕がなくなったのです。
そこで昼休み、思い切って声をかけました。
「前に貸した3万円なんだけど、そろそろ返してもらえるかな?」
すると友人の表情が一瞬で曇りました。
そして信じられない言葉を口にしたのです。
「え?たった3万円でしょ?」
私は耳を疑いました。
さらに彼女は周囲にも聞こえる声で続けました。
「そんなにお金に困ってるの?」
「あなたなら余裕あるじゃん」
近くにいた同僚たちもこちらを見ています。
すると別の同期まで、
「友達なんだからそんな厳しく言わなくても……」
と言い始めました。
まるで私が心の狭い人間みたいな空気になったのです。
ですが、その瞬間。
私は我慢するのをやめました。
「困ってるから貸したんだよ」
「でも返すって約束したよね?」
友人は唇を噛みました。
それでも、
「私はずっと苦労してきたの」
「ちゃんとした服も持ってなかった」
「普通の人みたいになりたかっただけ」
と涙ぐみ始めました。
私は静かに答えました。
「好きな服を買うのは自由だよ」
「でも、それは自分のお金でやるべきじゃない?」
周囲が静まり返りました。
私はスマホを取り出し、送金履歴を見せました。
さらに当時のLINEも開きます。
そこには、
「本当に助かる」
「給料入ったら絶対返す」
という彼女自身のメッセージが残っていました。
誰も何も言えなくなりました。
最後に私はこう言いました。
「善良なのは自由」
「でも善意を当然だと思うのは違う」
「貸した側が悪者になるのはおかしいよね」
その日の夕方。
私の口座には3万円が振り込まれていました。
謝罪の言葉はありませんでした。
でも私はもう気にしませんでした。
お金は戻ってきました。
そして、それ以上に大切なことも分かったからです。
本当に困っている人と、他人の善意を当たり前だと思う人は、まったく別だということを。