私の母は、私がまだ幼い頃に亡くなった。
その後、父は再婚した。
継母は表向きは穏やかな人だったが、
私への態度は常に冷たかった。
そして異母弟が生まれてから、
家の中の優先順位は完全に決まった。
跡取りは弟。
私は“ついで”。
欲しい物は、
弟が「欲しい」と言えばすぐ買ってもらえる。
でも私は、
学校で必要な物ですら、
嫌そうな顔をされながら渡された。
継母の実家へ行く時も、
父と継母と弟の三人だけ。
私は家で留守番。
その頃から私は、
「この家に私の居場所はない」
と分かっていた。
唯一救いだったのは、
父の弟夫婦だった。
叔父夫婦だけは、
いつも私を気にかけてくれた。
だから高校受験を機に、
私は家を出た。
叔父夫婦の近くで暮らし、
奨学金とバイトで大学を卒業し、
就職して、
結婚した。
結婚式では、
叔父夫婦が親代わりとして隣に立ってくれた。
父も継母も呼ばなかった。
もう、
完全に縁を切ったつもりだった。
ところが昨年。
突然、
知らない女性が家を訪ねてきた。
「初めまして。○○の妻です」
異母弟の嫁だった。
私は一瞬、
言葉を失った。
話を聞くと、
継母の実家が倒産。
しかも父の会社が連帯保証人になっていたせいで、
家業まで倒産寸前だという。
父が会長。
異母弟が社長。
継母が専務。
でも継母の浪費で蓄えもなく、
完全に資金繰りが破綻したらしい。
そこまでは、
正直どうでもよかった。
でも次の言葉で、
私は耳を疑った。
「お義姉さん名義の土地、売って助けてもらえませんか?」
私は思わず聞き返した。
「……は?」
実は私の実母は地主の娘だった。
祖父の遺産として、
父と私名義の土地が残っていたらしい。
当時私は子供だったので、
全て父が管理していた。
私はその存在すら、
ほとんど知らなかった。
異母弟嫁は続けた。
「お父さん名義の土地だけじゃ足りないんです」
「だから、お義姉さんの土地も売れば…」
私は呆れた。
あれだけ私を家族扱いしなかった人たちが、
金の話になった瞬間だけ、
“家族”面してきたのだ。
しかも、
私と継母の関係を知っていながら。
私は静かに言った。
「無理です」
すると異母弟嫁、
露骨に顔を変えた。
「でも家族ですよね?」
「困ってるんですよ!?」
家族?
私が高校生の時、
生活費を稼ぐために深夜バイトしていた時、
誰一人助けてくれなかったのに?
私は玄関を開けた。
「帰ってください」
それでも彼女は食い下がった。
だから私は、
弁護士の知人へ連絡した。
調べてもらった結果、
私名義の土地は、
長年父側に勝手に管理され続けていた。
すぐに正式な手続きを進め、
私は土地の権利を取り戻した。
すると今度は、
継母と異母弟嫁から嫌がらせが始まった。
毎日の電話。
意味不明なFAX。
「冷血女」
「親を見捨てるのか」
という罵倒。
でも全て、
弁護士経由で対応した。
最終的に、
父の会社はギリギリ倒産を免れたらしい。
異母弟もかなり叱責されたと聞いた。
それ以来、
ようやく連絡は止まった。
私は今でも思う。
血が繋がっていても、
“家族”とは限らない。
逆に、
血が繋がっていなくても、
本当に支えてくれる人はいる。
私にとっての家族は、
見捨てた父じゃない。
苦しい時に手を差し伸べてくれた、
叔父夫婦の方だった。