居酒屋で、いつも通り食事を楽しんでいた私。
会計の時、店員がにこやかに伝えた。「2600円です」
私は財布から3000円を出し、渡す。
「はい」
その瞬間、店員の視線が私に突き刺さった。
じーっと、動かず、20秒ほど見つめ合う。
私の頭の中は混乱した。「え?なに?なんで怒ってるの?」
店員の眉間には微かな皺。目は真剣そのもの。
私の心臓はドキドキし始めた。
周りの空気まで静かに感じるほどの緊張感。
ようやく店員が口を開いた。
「…あの、ありがとうございます」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
しかし次の瞬間、レジ横の小さなメモに気づく。
そこには「お釣りはお客様のために置いておくように」との店長の指示が書かれていたのだ。
私は、ただ自分の意思で端数を切り上げたつもりだった。
でも、その小さな心遣いが、店員にとっては特別な意味を持つ行為だったのだ。
一件の会計が、私と店員の間に、ほんの一瞬の心の交流を生んだ。
なんだかほっこりとした気持ちになりながら、私はその場を後にした。
小さな行動でも、人に想いは伝わる――そんなことを改めて感じた、居酒屋での20秒だった。