海斗は二ヶ月の海外出張を告げられ、夢だったミュージシャン活動も諦め、就職活動に切り替える決意をした。十日後にはニューヨークへ向かう予定だという。しかし、和子の心中は穏やかではなかった。生活費やスーツ代、交通費の請求が重なり、信頼の糸は徐々にほつれていく。
「本当にこれで大丈夫?」と和子が尋ねても、海斗は「もちろん大丈夫、全部自分でやるから」と軽く答えるだけ。だが、彼の言動は伴わず、知らない女性と外で飲む写真が和子の目に飛び込む。怒りと不安が一気に膨れ上がり、二人の間の空気は凍りついた。
和子はただ怯むことなく、現実的な手段で反撃する。親族に連絡し、警察まで動員することで海斗を追い詰める。生活費は底をつき、貯金も減り続ける中で、二人はようやく互いの行動と責任を直視せざるを得なくなる。
「夢も就活も中途半端、もう何も叶えられない」と涙を浮かべる海斗に、和子は冷静に告げた。『努力を無駄にしたのはあなた自身。
私たちは自分の力で生きる』。その言葉は、彼の甘さを突き、初めて現実と向き合わせた。
二人の間に残るのは、喧嘩の傷ではなく、行動と責任の重み。海外出張というタイミングさえも、互いの成長と試練に変わったのである。海斗はこの経験を経て、ようやく大人として立ち上がる決意を固めた。