「お前の弁当なんて食えるか」妻の弁当をゴミ箱に捨てた夫。だが弁当袋の底に隠されたメモを見つけた瞬間、夫は会社で固まった。
2026/05/17

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休日の昼、夫は私の作った弁当を目の前でゴミ箱に捨てた。「お前の弁当なんて食えるか」と低い声で言い放ち、白いご飯も小さなおかずも、私の三十年分の想いも一緒に落ちていった。あの日から、私は台所に立つ足が重くなった。しかし、作ることをやめる選択はしなかった。毎朝、白いご飯に少しだけ野菜を添え、夫が好きな味を一つ忍ばせる。それは、言葉にできない小さな愛情の伝達だった。

数日後、私は弁当箱の底に小さなメモを忍ばせた。「無理しないでね」とだけ書いて。夫は依然として食べず、持ち帰るだけだったが、私は責めなかった。ただ、彼の一日が少しでも穏やかでありますようにと願った。毎日続ける中で、弁当は言葉の代わりとなり、私の祈りを静かに届ける手段となった。

ある昼、夫の弁当箱に目を留めると、底に重なる紙の束があった。ぎこちない字で「すまなかった。明日も作ってくれ」とだけ書かれていた。たった二行で、十年分の冷たい空気が溶けた気がした。

私は台所で涙をこらえながら、初めて夫の心に届いたことを感じた。

それから十年。夫はこの世にいない。それでも、私はあの日の弁当箱を捨てられずにいる。甘い卵焼きを一切れだけ入れ、仏壇の前にそっと置く――小さな弁当箱には、今も私の愛と、届いた感謝の気持ちが詰まっている。

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