私は23歳になる娘に、門限を午後7時と決めています。
周りからは「厳しすぎる」と言われます。でも私はそうは思いません。事件や事故のニュースを見るたびに、「もし娘だったら」と胸が締めつけられるからです。親なら心配して当たり前でしょう。
だから社会人になってからも門限は変えませんでした。残業の日は会社を出る前に連絡をもらい、私が最寄り駅まで迎えに行く約束です。誰と会うのか、どこへ行くのかも必ず聞いています。それが娘を守る一番の方法だと信じていました。
それなのに最近、娘は平気で門限を破るようになりました。
「会社の人と食事だった。」
「友達と話してただけ。」
そう言うだけで、悪びれる様子もありません。
私は罰として夕食を抜かせ、水回りの掃除をさせました。それでも効果はありません。
ある日、娘の携帯を見ると、通話履歴もメッセージもきれいに消えていました。
「どうして消したの?」
そう聞くと、娘は私の目を見て言いました。
「勝手に携帯を見るの、もうやめて。」
その一言に頭が真っ白になりました。
親が子どもの交友関係を知るのは当然ではないのでしょうか。危険な男に騙されるかもしれない。悪い友達がいるかもしれない。私は娘を疑っているのではありません。ただ守りたいだけなのです。
主人に相談すると、思いもよらない言葉が返ってきました。
「お前、少しやりすぎじゃないか。」
私は耳を疑いました。
「じゃあ何もしないで放っておけっていうの?」
「23歳だ。もう子どもじゃない。」
その言葉がどうしても理解できませんでした。
私は提案しました。
「門限を破ったら罰金にしましょう。」
主人は首を横に振りました。
「家庭で金を罰に使うのは違う。」
誰も私の味方をしてくれませんでした。
数日後、仕事から帰ると、娘の部屋が空になっていました。
机の上には鍵と、一枚の紙だけ。
『お母さんは私を信じているんじゃない。私を思い通りにしたかっただけ。これ以上一緒にいたら、私はお母さんのことを嫌いになってしまう。
だから家を出ます。』
何度も読み返しました。
私は娘を愛していたはずです。
娘の幸せだけを願っていたはずです。
なのに、どうして最後はこんな結末になってしまったのでしょう。
今でも夜7時になると、玄関の時計を見てしまいます。
「もうすぐ帰ってくる。」
そんな癖だけが、今も消えません。