結婚当初、私は「夫婦なんだから支え合っていける」と信じていた。だが現実は違った。
夫は結婚後も生活リズムを変えず、家事も育児も一切関わらなかった。洗濯も料理も保育園の送り迎えも、すべて私一人。話し合いをしても「仕事で疲れてる」の一言で終わる日々が続いた。
気づけば4年が過ぎていた。
ある日、夫は突然言った。
「好きな人ができた。離婚しよう」
私は驚くほど冷静だった。涙も出なかった。
「いいよー」
その返事に、夫は少し拍子抜けしたような顔をした。
翌日、夫は封筒を差し出した。
「これ、手切れ金」
中身はまとまった現金だった。慰謝料というより、“区切り”のような金額だった。
私はそれを受け取り、何も言わずに離婚届にサインした。
それから数年後。
元夫から突然連絡が来た。
「……あの時のことなんだけど」
声は以前より弱々しかった。
「今になって分かった。あの手切れ金、全部自分の都合で勝手に終わらせるためのものだったって。君にはもっと権利があったんだよな……」
私は静かに言った。
「もう遅いよ」
彼は黙った。
私はすでに、自分の生活も人生も立て直していた。あの頃の“我慢していた私”には、もう戻れなかった。